歯科治療を受ける際、多くの人が気になるのが「費用」の問題です。そして、「歯科」と「口腔外科」では、その費用体系や、保険適用の範囲にも、いくつかの違いがあります。これらの違いを理解しておくことは、安心して治療を受ける上で役立ちます。まず、基本的な考え方として、日本には「国民皆保険制度」があり、虫歯や歯周病など、病気の治療と判断されるものの多くは、保険が適用されます。これは、一般歯科でも、口腔外科でも同じです。例えば、虫歯を削って銀歯を詰める治療や、歯周病の歯石除去、そして、通常の抜歯などは、どちらの科で受けても、保険診療の範囲内となります。しかし、口腔外科で行われる、より専門的な治療の中には、保険適用に関して、特有のルールが存在するものがあります。その代表例が、「インプラント治療」です。インプラントは、一部の特殊なケース(病気や事故で広範囲に顎の骨を失った場合など)を除いて、基本的には「自費診療(自由診療)」となり、保険は適用されません。これは、口腔外科でも、一般歯科でも同様です。一方で、口腔外科が得意とする「親知らずの難抜歯」や「顎関節症の治療(スプリント療法など)」、「口の中の良性腫瘍の切除手術」などは、すべて保険適用の対象となります。見た目を改善するための「審美歯科」とは異なり、これらは機能や健康を回復させるための、明確な「治療」と見なされるからです。また、「口腔がん」の治療も、手術、放射線治療、化学療法を含め、もちろん保険が適用されます。費用面で大きな違いが出てくる可能性があるのが、大学病院などの口腔外科で「紹介状なし」に受診した場合です。前述の通り、この場合は、通常の医療費とは別に、「選定療養費」という追加料金(自費)がかかることが一般的です。これは、地域の医療連携を推進するための制度であり、「まずは、かかりつけ医に相談してください」という国の方針に基づいています。結論として、ほとんどの「病気の治療」は、歯科でも口腔外科でも、保険が適用されると考えて良いでしょう。ただし、インプラントや、審美目的の治療は自費となります。治療を始める前には、必ず、その治療が保険適用なのかどうか、そして、おおよその費用はどのくらいかかるのかを、医師に確認し、十分に説明を受けてから、納得して進めることが大切です。
費用や保険適用で見る「歯科」と「口腔外科」の違い