スポーツ中の衝突や、不意な転倒、あるいは交通事故など、私たちの日常生活には、顔や口元に強い衝撃を受けてしまうリスクが潜んでいます。もし、そのようなアクシデントで、歯が折れたり、抜けたり、あるいは顎を強打してしまった場合、パニックにならずに、速やかに「口腔外科」を受診することが、その後の回復を大きく左右します。顔面や口腔の外傷は、見た目以上に複雑な問題をはらんでいることが多く、その処置には高度な専門知識と技術が求められます。口腔外科は、まさにこの領域のスペシャリストです。例えば、「歯が折れた(歯冠破折・歯根破折)」場合。折れた場所や範囲によって治療法は異なります。神経が露出している場合は、感染を防ぐための処置が必要ですし、歯の根まで割れている場合は、残念ながら抜歯となることもあります。口腔外科では、正確な診断のもと、歯を保存できる可能性を最大限に追求します。次に、「歯がグラグラする、位置がずれた(歯の亜脱臼)、あるいは完全に抜けてしまった(歯の完全脱臼)」場合。特に、歯が完全に抜けてしまった場合は、時間との勝負になります。抜けた歯を、乾燥させないように牛乳や生理食塩水に浸し(なければ口の中に含んで)、できるだけ早く(理想は30分以内)口腔外科に持ち込むことができれば、「再植」といって、元の位置に戻して固定し、再び生着させられる可能性があります。これは、口腔外科ならではの専門的な処置です。さらに、深刻なのが「顎の骨が折れた(顎骨骨折)」場合です。口が開けられない、噛み合わせが急にズレた、といった症状がある場合は、骨折を疑う必要があります。口腔外科では、レントゲンやCTで骨折の部位と程度を正確に診断し、治療を行います。治療は、骨折した部分を正しい位置に戻し(整復)、ワイヤーやプレートを使って固定する手術が必要となります。このように、口腔外科は、歯そのものの処置だけでなく、歯を支える骨や、顎全体の構造を理解した上で、機能と見た目の両方を回復させるための、総合的な治療を行ってくれるのです。もしもの時に備え、「口の怪我は口腔外科へ」と覚えておくことが、あなたやあなたの大切な人の歯と口の未来を守ることにつながります。
転倒や事故で口を怪我!歯や顎の外傷こそ口腔外科の専門領域