口の中にできた赤い斑点が、ぶつけた覚えもないのに、複数個できていたり、歯磨きの時に歯茎から簡単に出血したり、あるいは鼻血や青あざといった、他の症状も伴う場合、それは単なる口の中の問題ではなく、全身の病気、特に「血液の病気」が隠れているサインかもしれません。口の中の粘膜は、血管が豊富で、非常にデリケートなため、体の内部の変化が症状として現れやすい場所の一つです。特に、血液の異常は、口の中に「点状出血(紫斑)」として現れることがあります。点状出血とは、皮膚や粘膜の下で、毛細血管が破れてできる、ごく小さな赤い点のことです。指で押しても色が消えないのが特徴で、これは赤血球が血管の外に漏れ出していることを示しています。この点状出血が口の中に多発する場合、まず考えられるのが、血液を固める役割を持つ「血小板」の異常です。何らかの原因で、血液中の血小板の数が極端に減少したり、血小板の機能が低下したりすると、血管がもろくなり、ささいな刺激でも簡単に出血するようになります。代表的な病気に、「特発性血小板減少性紫斑病(ITP)」があります。これは、免疫の異常によって、自分自身の血小板が破壊されてしまう病気で、口の中の点状出血や歯茎からの出血、そして皮膚のあちこちに青あざができるといった症状が見られます。また、白血病などの、骨髄で正常な血液が作れなくなる病気でも、血小板が減少し、同様の出血傾向が現れることがあります。その他にも、血液の凝固に関わるタンパク質(凝固因子)が不足する血友病や、ビタミンKの欠乏なども、出血を引き起こす原因となります。もし、あなたの口の中に、原因不明の赤い斑点(点状出血)が複数見られ、それに加えて、歯茎からの出血が止まりにくい、鼻血がよく出る、身に覚えのない青あざが多い、といった症状がある場合は、安易に考えず、できるだけ早く医療機関を受診してください。この場合、最初の窓口としては、まず「内科」、あるいはより専門的な「血液内科」を受診するのが適切です。口の中の小さなサインが、全身の重大な病気を早期に発見する、重要な手がかりとなることがあるのです。