失ってしまった歯の機能と見た目を、まるで天然の歯のように回復させることができる「インプラント治療」。今や、歯の欠損に対する有力な選択肢の一つとなっていますが、この治療は、顎の骨に人工の歯根を埋め込む、れっきとした外科手術です。だからこそ、治療を成功に導く上で、外科処置の専門家である「口腔外科医」の知識と技術が、非常に重要な役割を果たすのです。特に、全ての人が簡単にインプラント治療を受けられるわけではありません。歯周病が進行して歯を失った場合や、歯が抜けてから長い時間が経過している場合など、インプラントを埋め込むための十分な「骨の量や厚み」が不足しているケースは少なくありません。土台となる骨がなければ、インプラントという名のビルを建てることはできないのです。このような、いわゆる「難症例」において、口腔外科医の真価が発揮されます。口腔外科医は、不足した骨を増やすための「骨造成(こつぞうせい)」と呼ばれる、高度な外科手技に精通しています。例えば、上の奥歯の骨が薄い場合には、「サイナスリフト」や「ソケットリフト」といった手技で、上顎洞(鼻の横にある空洞)の底を押し上げ、そこに骨補填材や自家骨(自分の骨)を移植して、骨の厚みを確保します。また、骨の幅が足りない場合には、「GBR(骨再生誘導法)」という特殊な膜を使って、骨を再生させるスペースを作り、その中に骨補填材を満たして、骨の幅を増やすといった処置を行います。これらの骨造成は、顎の解剖学的な構造や、血管、神経の走行を熟知していなければ、安全に行うことはできません。口腔外科医は、豊富な外科経験と知識に基づき、これらの処置を的確に行うことができるのです。さらに、インプラント手術は、全身の健康状態にも配慮が必要です。糖尿病や骨粗鬆症、心臓病などの持病がある患者さんに対しては、医科の主治医と連携を取りながら、全身の状態を管理し、安全に手術を進める必要があります。大学病院などの口腔外科では、このような全身管理下での手術体制も整っています。インプラント治療は、単に歯を入れるだけの治療ではありません。あなたの体の健康と未来を考えた時、外科のプロフェッショナルである口腔外科医が関わることは、治療の成功率を高め、長期的な安心を得るための、非常に賢明な選択と言えるでしょう。
インプラント治療、口腔外科医が頼りになる理由