一般の歯科医院と、大学病院などにある口腔外科。その違いは、治療内容や医師の専門性だけでなく、備えられている「設備」にも明確に現れます。より高度で安全な外科処置を行うために、口腔外科には、一般歯科にはない、特別な医療機器が数多く導入されています。その代表格が、「歯科用CT」です。通常のレントゲンは、二次元の平面的な画像しか得られませんが、CTは、三次元の立体的な画像で、骨の厚みや形、神経や血管の走行などを、あらゆる角度から詳細に把握することができます。これは、骨の中に埋まっている親知らずと、顎の神経との位置関係を正確に診断したり、インプラントを埋め込む位置を精密にシミュレーションしたりする上で、もはや不可欠な設備です。また、手術の安全性を高めるために、「生体情報モニター」も常備されています。これは、手術中の患者さんの心電図、血圧、脈拍、血中酸素飽和度などを、リアルタイムで監視する装置です。高血圧や心臓病などの持病がある患者さんの手術では、このモニターで全身の状態を常にチェックしながら、安全に処置を進めます。さらに、手術室そのものの設備も異なります。口腔外科の手術室は、より厳密な衛生管理が求められるため、空気清浄度の高いクリーンな環境が保たれています。そして、手術に対する不安や恐怖心が非常に強い患者さんのために、「静脈内鎮静法」を行うための設備も整っています。これは、点滴から鎮静剤を投与し、リラックスした状態で手術を受けるための麻酔法で、専門の麻酔医や、トレーニングを積んだ歯科医師でなければ安全に行うことはできません。加えて、大学病院などの口腔外科であれば、万が一、手術中に予期せぬ事態が発生した場合でも、院内の麻酔科や救急科、その他の医科の診療科と、迅速に連携できる体制が整っています。これらの高度な設備と、それを使いこなす専門スタッフの存在こそが、一般歯科では対応が難しい、複雑な外科処置を、安全かつ確実に行うことを可能にしているのです。