歯医者トレーニングベスト9

それは、楽しみにしていた週末の焼肉でのことでした。友人との会話に夢中になりながら、勢いよくご飯を頬張った瞬間、左の頬の内側に「ガリッ」という鈍い衝撃と激痛が走りました。やってしまった。誰もが経験する、あの絶望的な瞬間です。その日はジンジンとした痛みを感じながらも、何とか食事を終えましたが、本当の戦いは翌日から始まりました。朝、鏡を見ると、昨日噛んだ場所が、直径5ミリほどの、白い円形のクレーターになっていました。典型的な口内炎の誕生です。食事のたびに、醤油やドレッシングが傷口にしみ、思わず声が出るほどの痛み。熱いお茶を飲むのも、スープをすするのも一苦労です。何より辛かったのは、口を動かすだけで痛むため、会話が億劫になってしまったことでした。この白い悪魔を一日でも早く退治するため、私の一週間にわたる戦いが始まりました。まず取り組んだのは、食事改革です。全ての刺激物を断ち、メニューは冷たいおかゆ、ヨーグルト、豆腐、そして栄養補助ゼリー。味気ない食事でしたが、しみる痛みに比べれば天国でした。次に、スキンケアならぬ「マウスケア」の見直しです。歯磨き粉を、スースーするミント味のものから、低刺激のジェルタイプに変更。歯ブラシも、患部に当たらないように、赤子を扱うかのような、細心の注意を払って動かしました。そして、粘膜の修復を助けるというビタミンB群のサプリメントも飲み始めました。しかし、一番効果があったと感じたのは、最もシンプルで、最も忍耐を要する「何もしないこと」でした。気になって仕方がない白い膜を、絶対に舌で触らない。治りかけて痒くなってきても、歯でこすらない。そして、体の免疫力を高めるために、いつもより一時間早くベッドに入り、十分な睡眠をとる。この地道な努力を続けた結果、戦いの火蓋が切られてから約一週間後、あれほど私を苦しめた痛みは引き、白い膜も一回り小さくなっていることに気づきました。完全に勝利宣言をするにはまだ早いですが、長いトンネルに、ようやく光が見えた瞬間でした。