歯医者トレーニングベスト9

2025年8月
  • 口の中のしこりやできもの。口腔外科での診断と治療

    医療

    ある日ふと、口の中に今までなかった「しこり」や「できもの」を見つけると、誰でも不安になるものです。特に痛みがない場合は、つい様子を見てしまいがちですが、その正体を正確に突き止めるためには、口腔外科での専門的な診断が不可欠です。口の中にできる「できもの」は、そのほとんどが心配のいらない良性のものです。例えば、誤って粘膜を噛んだことが原因で、唾液の出る管が詰まって風船のように膨らむ「粘液嚢胞」や、合わない入れ歯などの慢性的な刺激で組織が硬く盛り上がる「線維腫」などは、非常に多く見られます。これらは、口腔外科で視診や触診を行うことで、多くの場合診断がつきます。大きくなって食事や会話の邪魔になる場合は、局所麻酔下での簡単な切除手術が行われます。しかし、口の中のできものの中には、ごく稀に「口腔がん」という悪性の病気が隠れている可能性があります。口腔外科の最も重要な役割の一つは、この悪性の可能性を正確に見極めることです。口腔がんの初期症状は、痛みがない硬いしこりや、なかなか治らない口内炎、こすっても取れない白い斑点(白板症)や赤い斑点(紅板症)など、他の良性の病変と見分けがつきにくいことがあります。そのため、少しでも悪性が疑われる場合には、「生検(せいけん)」という精密検査が行われます。生検とは、できものの一部(数ミリ程度)をメスで切り取り、それを顕微鏡で詳しく調べる「病理組織検査」のことです。局所麻酔で行うため、痛みはほとんどありません。この検査によって、その細胞が悪性かどうか、つまり「がん」であるかどうかの確定診断を下すことができるのです。もし、がんと診断された場合も、口腔外科が中心となって治療を進めていきます。手術によるがんの切除はもちろん、必要に応じて、放射線治療や化学療法(抗がん剤治療)を、大学病院などの関連各科と連携しながら行います。口の中のできものは、自己判断が最も危険です。痛みがあってもなくても、2週間以上消えない、あるいは大きくなるような場合は、必ず口腔外科を受診してください。早期発見、早期治療が、あなたの健康を守るための最大の鍵となります。