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2025年8月
  • 親知らずの抜歯、口腔外科に行くべき?その判断基準

    知識

    多くの人を悩ませる「親知らず」。生え方によっては、痛みや腫れ、歯並びの悪化など、様々なトラブルを引き起こします。そして、抜歯が必要と判断された時、次に考えるべきなのが、「どこで抜くか」という問題です。近所の一般歯科で抜ける場合もあれば、「大学病院の口腔外科に行ってください」と紹介される場合もあります。この違いは、一体どこにあるのでしょうか。親知らずの抜歯は、実は非常にバリエーションに富んだ外科処置です。まっすぐに生えていて、歯の頭が完全に出ているような簡単なケースであれば、一般の歯科医院でも問題なく抜歯できます。しかし、以下のような「難症例」に当てはまる場合は、高度な技術と設備、そして緊急時の対応能力が求められるため、口腔外科での抜歯が強く推奨されます。その代表的な判断基準が、「歯の生え方」です。レントゲンを撮った時に、親知らずが「真横を向いて生えている(水平埋伏)」、あるいは「斜めに傾いている」場合、歯茎を切開し、時には歯をいくつかに分割したり、周りの骨を少し削ったりしないと抜くことができません。これは、非常に専門的な技術を要する手術となります。また、「骨の中に完全に埋まっている(完全埋伏)」場合も同様です。次に、「歯の根の位置」も重要なポイントです。特に下の親知らずの場合、歯の根の先端が、顎の中を通る太い神経(下歯槽神経)や血管に非常に近い、あるいは接していることがあります。このようなケースで万が一神経を傷つけてしまうと、術後に唇の麻痺などが残るリスクがあります。口腔外科医は、こうした解剖学的な構造を熟知しており、CT撮影などで三次元的に位置関係を把握した上で、神経を傷つけないように細心の注意を払って手術を行います。その他にも、心臓病や糖尿病、骨粗鬆症といった全身的な持病があり、抜歯に際して特別な配慮が必要な方や、歯科治療に対して極度の恐怖心があり、静脈内鎮静法などの麻酔を希望する方も、口腔外科が適しています。もし、あなたの親知らずが、これらの難症例に当てはまるようであれば、安全かつスムーズに治療を進めるために、口腔外科という専門家の力を頼るのが最も賢明な選択です。